ファイル50 ついにミスター・タイガーの正体判明!

2007.4.4

 

 超一流レスラーとなれば話は別だが、そうでないレスラーは活躍する地区、時期によって多くのリングネーム、ギミックを使い分けなければならない。特に変身癖があるレスラーとしては、ドン・ファーゴが有名だが、昭和45年に国際プロレスに登場した胸に鷲、腹に虎の刺青を入れた怪奇派マスクマン「ミスター・タイガー」のキャラクター変遷も興味深い。

 ミスター・タイガーが来日したのは昭和45年9月の「ダイナマイト・シリーズ」。スパイロス・アリオンの来日が決定していながら、日本プロレスの妨害により、来日が中止になったことで有名なシリーズである。当時の「プロ&ボク」に掲載されたミスター・タイガーの紹介記事に以下のような記述が・・・

「正体は東南アジアに遠征した日本プロレス勢がすでに暴いており、本名はフランク・ブラウン」

つまり、昭和44年に日本プロレス一行が東南アジアツアーに出かけた際にツアーに参加した、同じ刺青を入れていたミスターXと同一人物で本名はフランク・ブラウンであることを暴露しているのである。

 

   

日プロの東南アジアツアーに
登場したミスターX

  国際プロレスが使用した宣伝写真   実際に登場したミスタータイガー

 

 実はミスター・タイガーが登場する直前の「サマー・ビッグ・シリーズ」後半戦にミスター・ブラウンなるレスラーが急遽来日している。この男は黒い長袖のシャツを着て素顔でファイトしたが、このミスター・ブラウンこそ、ミスター・タイガーの正体フランク・ブラウンであった。なぜ、素顔でトレードマークの刺青を隠してファイトしたのかは謎である。しかし、推理をめぐらせると、「ダイナマイト・シリーズ」に掲載された宣伝写真では、虎模様ではなく、ヒョウ柄のマスクとタイツを着けたフランク・ブラウンが写っている。つまり、虎模様のコスチュームが用意できなかった為に素顔でファイトさせたのではないだろうか? しかも正体が判明するのを避ける為に、刺青をかくしたのではないか?

 日本で出版された書物などで追いかけられるミスター・タイガー=フランク・ブラウンの足跡は、ミスタータイガーとして来日した時点で途切れてしまう。しかし、先日、アメリカのプロレスサイト「Obsessed with Wrestling」のレスラー名鑑を見ているとアール・ブラックなるレスラーの写真が目に付いた。

http://www.obsessedwithwrestling.com/profiles/e/earl-black.html 

 

   

東南アジア時代の写真

  極東王座も獲得したようだ   カルガリー時代

 

この刺青、見覚えがある! ミスター・タイガーと同じ鷹と虎の刺青ではないか! 本名を見ると、フランク・ブラウウンではなく、フランク・ブラックであった! なぜ日本ではブラックではなく、ブラウンを名乗ったのであろうか?

 さらにプロフィールを見ると、同時期に日本プロレスに来日していたジン・キニスキーに見初められて、バンクーバーに遠征。以後、カルガリーではクルト・フォン・ヘスとコンビを結成し、1971年にカルガリー地区のインターナショナル・タッグを獲得、同地区ではジョー・トマッソとのコンビでも同王座を獲得。その後はカンサス、フロリダにも遠征したが、背骨を傷めて27歳の時に引退(1943年生まれ、27歳となると1970年つまり来日中・・・サバを読んでいるわけだ!)、リングから去り、余生はイギリスで過ごしたという。

 ネットの繁栄については功も罪もあるわけだが、ネットでの情報共有化のおかげで日本では断片的にしか知られていなかったひとりのレスラーのリング人生の全貌が判明し、ようやく日本のファンの知るところとなったのである。