ルー・テーズ追悼コラム 「さらば鉄人、そしてストロング・プロレス」

 

 

鉄人ルー・テーズ逝去の第一報を聞いたとき、正直言って誤報ではないか?という思いがまず胸に浮かんだ。あの健康なテーズ氏がなくなるはずがないと思ったからである。テーズは80を超えてもトレーニングを欠かさず、現役時代そのままとは行かぬが、とても80歳を超えた老人とは思えぬ肉体を誇っていた。そのテーズに死は私の中では結びつかなかったのである。

昭和44年生まれの私はもちろんテーズの全盛期は知らない。国際プロレスと全日本プロレスで行ったエキジビション・マッチしかリアルタイムで彼の試合を見ていない。しかしその後、60年代の彼の試合をビデオで見る機会に恵まれたが、その風格にまず圧倒された。両腕を前にたらし手を膝の高さでかまえ、腰を落ち好かせたそのファイティング・ポーズには派手さはないが、なんともいえぬ威圧感があった。そして技の正確さ。国際プロレスにも参加したホセ・クインテロとのTVマッチで見せたSTFのスピーディーなこと!テイクダウンからSTFの体勢に入るまでわずか3秒!そして何よりも素晴らしいのはプロレスに対する真摯な態度である。彼は心底プロレスを愛し、相手のレスラーを尊重していたといえる。まさに20世紀最高のレスラーと呼ぶにふさわしい男である。彼こそがストロング・プロレスの象徴であった。その鉄人の訃報はストロング・プロレスの終焉を意味すると私は思った。プロレス史においてひとつの大きな時代が終わったのである。

最後に。ネット上で「テーズは金に節操がない」などと書き込んでいる人がいるが、プロレスラーがプロレスで金を稼ぐのは当たり前のことである。恥ずべきことはプロレスラーやプロレス関係者がプロレスを「食い物」にすることである。

鉄人の冥福を祈る。

さらば鉄人、・・・さらばストロングプロレス。

2002年5月2日 ミック博士