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ザ・キングスメン / THE KINGSMEN 
 
   ディスコグラフィー
 
 キングスメン・ストーリー

「ルイ・ルイ」という曲名はロック・ファンなら一度は耳にした事があるだろう。この曲だけを収録したアルバムが何枚も出ているほど、多くのバンドがレコーディングした曲である。この曲でデビューしたポール・リヴィアーとレイダース(このグループも特集と組む予定)が「ルイ、ゴー・ホーム」なんていう続編を出すほどの、(少なくともアメリカでは)誰もが知っているロック史上に残る名曲といっていい。

しかしこの曲を始めてヒット・チャートに送り込んだ、アメリカ合衆国の太平洋岸の北西部オレゴン州はポートランド出身の5人組について知っている日本人は、残念ながら少ないのではないだろうか。それが今回特集を組んで皆さんに紹介する「キングスメン」である。彼らこそ今日まで連綿と流れる「ガレージ・バンド」の源流であると私は断言する。その底抜けに陽気な、一見何も悩みがないのでは?と聞くものをして思わせる彼らこそ「アン・アメリカン・バンド」と呼ぶに相応しいのではないだろうか。というわけで今回はキングスメンです。
 
日本で初めてキングスメンに付いて書かれたと思われる文章があるので、ここに抜粋して紹介しよう。

…今日ここに登場したのが事もあろうに自分たちを「キング」にたてまつっちゃって「キングスメン」と名乗ってる生意気な、それだけに印象に残るグループです。実にアメリカ人らしいですネ。

(中略)

全くオドロキました。ビルボード誌のホット100に顔を見せて実に4週目で23位にそして5週目には一躍4位にランクされてしまったのです。しかしもっとドッキリさせられた人が多勢いたはずです。というのは、チャック・ジャクソン、マキシン・ブラウン、などがいる黒人専門会社であるワンド・レコード(セプターの小会社)からデビューしたこのグループが実は写真でもお分かりのように白人であったというコトなのです。実際彼らの現在大ヒットしている「ルイ・ルイ」を耳にして「白人かな?」と疑った人がひとりもいなかった位に、とにかくあまりにも黒人的であった為、このグループが白人たちの集まりであったことにはかなりオドロイたものでした。しかし最近はこうした黒人の“音”を感じさせる白人アーティストが多くなりましたネ。

リン・イーストン(19才唄とサックス)、ゲリー・アボット(20才ドラム)、ドン・ガルーシ(16才オルガン)、マイク・ミッチェル(20才ギター)、ノーム・サンドホーム(17才ギター&ベース)の若者5人からなるこのグループは結成されたのは今から5〜6年くらい前の事でした。オレゴン州ポートランドのデヴィッド・ダグラス高校に入学したリン、ゲリー、マイクの3人によって結成されたこのグループは、その後各方面でかなりの活躍をし、ミッドウエストでは一応の名が知られていました。特に故郷ポートランドでの人気は大変なもので、土地のティーンの間ではもっぱらの評判でしたが、それをフリーのプロデューサー、ジェリー・デノンに認められ彼の世話でLPアルバムを吹き込むことになったのでした。

そしてこのころからますます彼らが忙しくなったのは申すまでもありません。その後ニューヨークのワンド・レコードに迎えられた彼らは、今回の「ルイ・ルイ」で人気を全国的なものにしたわけです。

こうして今やテレビ、劇場などで毎日のように演奏し唄って忙しく働いている彼らは、将来器用な連中ばかりですので、今後もきっとヒット・パレード界で大活躍してくれることでしょう。

これが「ミュージック・ライフ」誌64年2月号に掲載されたキングスメンに関するコラムである。残念ながら誰に手によるものであるか無記名のために分からないが、彼らのリズム&ブルースの影響を強く受けた独特のサウンドが、当時としては衝撃的だったことが手に取るように分かる貴重な資料である。

キングスメンの魅力は、何と言ってもそのワイルドな演奏スタイルにある。彼らのキャリアを振り替えると「ヒット・パレード・バンド」と言うよりむしろ「イン・パーソン・バンド」と呼ばれるに相応しい活動をしていたように思われる。彼らの活動の中心は、大学のダンス・パーティーに出向いてのライブだったようで、長期にわたるカレッジ・ツアーをその全盛期には挙行していたようだ。彼らの演奏スタイルはこのライブ・ツアーで確立されていったに違いない。

キングスメンのレコードを手に取れば分かるのだが、彼らの演奏していた曲のほとんどが黒人によるリズム・アンド・ブルースのカバーである。つまり彼らこそ(ポール・リヴィアーとレイダースと同じく)後に「ブルー・アイド・ソウル」と呼ばれた白人R&Bグループ達の元祖と言っても過言ではないだろう。同じ時期にイギリスではストーンズを始めとするR&Bグループが登場し始めていたが、キングスメンのサウンドにはイギリスのバンドにはない、アメリカ人特有の底抜けな陽気さが加味されている。ストーンズを「陰」とするなら、キングスメンは「陽」な訳だ。薄暗いクラブで演奏していたイギリスのグループに比べ、同じR&Bを演奏するにしても酔っ払った大学生の前で演奏しなければならなかった彼らのサウンドは、無意識にこの様な明るいものにせざるを得なかったのであろう。
メンバー変遷史 
[A] '63年
Lynn Easton (d), Mike Mitchell (g), Don Gallucci (p), Jack Ely (vo, g) Bob Norby (b)

[B] '63
Lynn Easton (vo, sax), Mike Mitchell (g), Don Gallucci (p), Norm Sandholm (b), Garry Abbot (d)

[C] '64 -'66
Lynn Easton (vo, sax), Mike Mitchell (g), Barry Curtis (org), Norm Sandholm (b), Dick Peterson (d)

[D]'66 - '67
Lynn Easton (vo, sax), Mike Mitchell (g), J. C. Rieck (key), Norm Sandholm (b), Dick Peterson (d)

[E] '67
Lynn Easton (vo, sax), Mike Mitchell (g), J. C. Rieck (key), Jeff Beals (b), Dick Peterson (d)

[F] '67
Mike Mitchell (g, b, vo), Dick Peterson (d, g, b, key, vo)

[G] '67
Mike Mitchell (g, vo), J. C. Rieck (key, vo), Jeff Beals (b), Dick Peterson (d, g, vo)

[H] '67
Mike Mitchell (g, vo), J. C. Rieck (key, vo), Jeff Beals (b), Dick Peterson (d, g, vo), Barry Curtis (g, b, org, vo)

他のアメリカのバンドの例に漏れず、キングスメンも激しいメンバーチェンジを繰り返していた。

この変遷史を見ると分かるが、キングスメンを終始支えていたのはマイク・ミッチェルであったと言うことだ。リーダーだと思っていたボーカルのイーストンが最初はドラム担当で、しかも途中で抜けていたとは筆者も今まで気づかなかった。彼らの黄金時代は間違いなくCのメンバー編成における時期であろう。

 
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