ネルソン・ロイヤルのテキサス・ブロンコ・バックブリーカー
(ザ・シークのキャメル・クラッチ)

2002.2.17 update

 

日本初公開の荒馬式背骨折り!

 

 今回紹介する技もほぼ絶滅の危機に瀕している必殺技となっている。メキシコではいまだにポピュラーな技として使われているようだが、日本のリングではほとんど見かけなくなってしまった。一般にはキャメル・クラッチと呼ばれるこの技を日本のファンにはじめて公開したのは、44年2月に来日した「荒くれ牧童」ことネルソン・ロイヤルであった。この技を開発したのはネルソンが先か?シークが先か?判然としないが、ネルソンのこの技はテキサス・ブロンコ・バックブリーカー(以下TBB)と呼ばれた。名前のとおり、ネルソンのTBBは相手の両腕をひざにかけ、状態をそらせて背骨にダメージを与えることを主目的としている。上の写真はネルソンが来日第1戦で公開したTBBの貴重な写真である。山本の両腕がピーンと伸び、技のフォームをさらに見栄えのよいものにしている。レフェリーのジョー樋口も緊迫感を感じさせるベストショットである。しかし、テキサス・ブロンコ・バックブリーカーという名称は彼一代で途絶えてしまう。

 

 

シークのキャメルクラッチは右腕だけをひざにかける。

 

 一方、この技の固有名詞として定着したのはキャメルクラッチ(らくだ固め)であった。しかし、写真をよく見ると、技のフォームはほとんど変わらないが、相手にダメージを与える箇所が異なっている点にお気づきになると思う。シークのキャメルクラッチは明らかにバック・ブリーカーというよりも、ネッククラッチの発展形である。写真では両手で相手の顎をしっかりロックしているが、なかには片手で顎をロックし、余った片手で髪の毛をつかむという決め方も結構おおかったようだ。当然これは反則であるが、地元のデトロイトではこれでも反則をとられず、フィニッシュとして使い続けた。甥のサブゥがこの技を引き継いでいるはず。

 

 

メキシコナンバーワンの使い手エル・サント。

 

 もう一人、このらくだ固めの使い手を忘れてはならない。メキシコの聖人 エル・サントである。メキシコではこの技をカバージョと呼ぶらしい。写真は’71年のもので、被害者は若き日のペロ・アグアーヨ(当時の表記はパアロ・アグヨ)である。サントのカバージョは腰をおろさず、中腰の状態で相手の口をふさぐ様な感じで締め上げている。これもやはり、首へのダメージを狙っているように見える。

 しかし、これだけ単純でダメージをわかりやすく表現できる拷問技はほかにはないだろう。相手の顔をグイーッと引き上げるあたりは寝技であるというデメリットを補うに十分。なかなか脱出不可能なフィニッシュホールドなのだが、あまりにも上の紹介した3人のイメージが強すぎるのか?これといった使い手がいなくなったは誠に残念である。