アントニオ猪木のコブラツイスト
2000.11.11 update
東京プロレスの公開練習で見せたコブラ・ ツイスト。腕のきめ方に注目! |
写真A:バディ・オースチンに決まった |
写真B:ロッキー・モンテロに決まったコブラツイスト。 |
過日おそらく平成のプロレスファンと思われる「あきら」と言うハンドルネームを持つビジターから、この様なメールを頂いた。 「こんばんわ。ちょっとお聞きしたい事がありまして、メールしました。「コブラツイスト」とは、どんな技ですか?図解してあるページがないかさまよっているところなんです。」 これは筆者にとっては大きなショックであり、今このページをご覧になっている昭和世代の皆様も筆者と同じ感情を抱かれたっであろう。コブラツイストと言えばプロレス技の定番、プロレスに興味のない人でもコブラツイストと16文キックは知っていたのではないか?そのコブラツイストがこの平成の日本では絶滅技になってしまっていたのである! あきら君のためにコブラツイストを解説したいと思う。この技はアメリカではアブドミナル・ストレッチ、グレープパイン・ホールドと呼ばれており、日本ではもっぱらコブラツイストが主流で、アバラ折りとも呼ばれた。日本で初公開したのはインドのダラ・シン、本場アメリカではディック・ハットン、ウィルバー・スナイダーがフィニッシュ・ホールドとして使っていた。日本人で最初にこの技をフィニッシュホールドとして常用するようになったのはアントニオ猪木。猪木と言えばコブラツイスト!というまでになった彼の代名詞的技である。 で、この技への入り方は、ロープに振ってすれ違いざまにかける時もあり、ブレンバスターに来るところを空中で切り替えして背後に廻ってかける時あり、KO寸前の相手をひきづり起こしてかける時あり・・・と実にさまざまなバリエーションがあった。肝心のかけ方は相手の左足に自らの左足をフック、背後に廻って左腕を自らの左腕で巻き込み、相手の体をねじり上げる。この時足のフックが重要で、これが甘いと柔道の払い腰の要領でなげられてしまう。昭和50年代にワールド・プロレスリングの解説を務めていた山本小鉄氏によれば、写真Aのように自分の手をがっちり握るのが完璧な形だと言う。しかし写真Aでの猪木の表情も素晴らしいが、写真Bでのかけられているロッキー・モンテロの表情も素晴らしい。これがプロレスである。 しかし改めて考え直せば、このコブラ・ツイストと言う定番技の使い手を、この平成のプロレスラーに中から選べと言われても、ちょっと重い浮かばない。西村修が意識的に使っていたが、他にはほとんど誰も使っていないのが現状。全く淋しい事である。猪木がフィニッシュに使っていた昭和40年代から50年代までは十分フィニッシュ・ホールドとなっていたが、猫も杓子もが使うようになり、この技の神通力も薄れ単なる痛め技に落ちぶれてしまった。プロレスの必殺技に重要なもの・・・それは「神通力」であったのである。 ここからはコブラツイストのバリエーションについて考えてみたい。まずこの技のオリジナルといわれる、サイクロン・アナヤの元祖コブラツイストと、ディック・ハットンのコブラツイスト。さらにルディ・サトルスキーとのバーバリアン・ボーイスで活躍した、ハリー・ウィンゼルの変形コブラツイストを見ていただこう。 |
アナヤは背後から絡みつくように |
ハットンは腕を組まず、身体を |
ウィンゼルの変形コブラ。 | わきの下に頭をいれ、両腕で腕 |
ます、オリジナルのアナヤだが、これは猪木が使っていたコブラツイストとまったく同じ。腕もしっかりホールドして相手の上半身をひねっている。肩関節と腰にダメージを与えているようだ。一方のハットンは体を密着させず、相手の身体に対し、自らの身体を90度開き相手の上半身をひねっているが、むしろ肩関節を痛めるといった印象がある。最後のウィンゼルはわきの下に頭をねじ込みさらに肩関節へのダメージに重点をおいているように見えるが、当時の実況では「バックブリーカー」と表現していた。コブラツイストは日本名のようにアバラにダメージを与える技ではなく、背骨を痛めつける技だったのである。 |
第6回IWAワールドシリーズでのショット。 わずか3分でキューバンアサシンを料理。 |
グレート草津はバションに苦しめ |
さて、01年10月に昭和プロレス掲示板で話題になったのが、マッドドッグ・バションの変形コブラツイストである。(上写真左)当時の雑誌ではそのまんま「変形コブラツイスト」として紹介されている。相手の足を取ることにより、コブラツイストにバックブリーカーの要素を付け加えた拷問技である。この技で苦しめられたのがグレート草津であり、草津はこの技をちゃっかり盗み、なぜかメキシコ流コブラツイストと名づけていた。この技も完全に絶滅している。昭和プロレスファンはコブラツイストの失地回復を望んでいるのである。(?) |