ブッチャー・ポール・バションのハングマンズ・ホールド

1999.12.12up date

 

  プロレスの必殺技には、大きく分けて2つのタイプがある。ひとつはマスカラスのダイビングアタックやロビンソンの人間風車のように観客にフォームの美しさをアピールするもの。もうひとつは見た目の派手さはないかわりに観客に「痛さ」をアピールするものである。

バション兄弟の弟の方・・・ブッチャー・ポール・バションはAWA、ニューヨーク、ロスで活躍した選手だが、超一流の兄に比べ、レスラーとしての実力は一枚も二枚も落ちた。しかし兄のマッドッドッグ・モーリス・バションには無い物を持っていた。・・・「必殺技」である。そのポールの必殺技が、このハングマンズ・ホールドである。写真をご覧になれば分かるが、これは全く地味な技であるが、技をかけられているレスラーの首の骨の軋みが聞こえてきそうな拷問技ではないか?まさにブッチャーを名乗るポール・バションにどんぴしゃりの技と言えよう。

しかしながらこの技はブッチャー・バションのオリジナル技ではない様だ。この技のルーツは、イタリアの怪男爵バロン・レオネの必殺技ショルダー・ネックブリーカーを改良したものであり、バション以前にも使い手はいたようだ。しかしながら、この地味な拷問技はデクの坊と酷評される事の多い、地味なポール・バションのために編み出された技のような気がして、筆者はしょうがないのである。バションがこの技を出す前に、負ける事の方がが多かった事も付け加えておかねばなるまい。愛すべきデクの坊ポール・バションに乾杯!!

 

 

     
             

この技の元祖バロン・レオネ

  ブラック・タイガーも意外な使い手   バロンシクルナのマルタ式背骨折   正面からのショット

 

やはりこの技は体のでかい男が使ってこそ見栄えがすると思うのだが、意外にも昭和50年代後半にジュニア・ヘビー級戦線を沸かせた初代ブラック・タイガー(マーク・ロッコ)もこの技を使いこなしていた。ヨーロッパでは古い技が生き延びていたのである。

さてこの技の類似技として最も有名なのがバロン・マイケル・シクルナが’66年1月24日MSGでブルーノ・サンマルチノを失神に追い込んだというマルタ式背骨折である。これは直接あごをつかむのではなく、わきの下から腕をいれ、胸も締め付けるという強力な複合技である。結局、サンマルチノを失神させておきながら「手がのどにかかっていた」という判定でタイトル獲得はならなかったが、無名のチャレンジャーシクルナが繰り出したこの殺人技はニュヨーカーの背筋を凍らせたという。