ジェーク・スミスのスタンプ・ホールド

2002.8.26 update
2002.10.15remake

 

   前回、「ケンタッキアン・バックブリーカー」の項で登場したルーク・ブラウンのパートナーだったのがジェーク・スミス(グリズリー・スミス)である。馬場よりもでかかったこの男は二度来日しているが、これといった実績を残せずに終わっている。そのスミスの得意技がスタンプ・ホールドであった。この技は相手の胴を締め付けるという点はベアハッグと同じだが、相手を逆さまにつるすという点でベアハッグよりも相手に脱出される可能性が少なくなる。さらに相手は頭に血が上り、最悪の場合は失神してしまうこともあるという強烈な技である。また、このまま持ち上げてマットに叩きつければパワーボムの完成である。

 しかしながら筆者個人にとってはこの技はそれほど危険な殺しわざと言う印象はない。というのもラッシャー木村がカナディアン・バックブリーカーに行くときに相手を持ち上げきれず、このスタンプ・ホールドに切り替えるというシーンがこの技を見た最初だったからである。つまり、スタンプホールドはカナディアン・バックブリーカーの出来損ないというイメージを持ってしまったのである。プロレス・ファンがある技をはじめてみるとき、その出会い方というのは非常に重要だといえよう。もしジェーク・スミスが相手を逆さ釣りにして振り舞わすというシチュエーションがこの技との初遭遇であれば、筆者のこの技への印象は180度違ったものになっていただろう。

 

 

   
         

ハッケンシュミットも使っていた。

 

ゴーディエンコの強烈な胴締め吊り。

 

ジョナサンも得意とした。

 

   
         

20cmほど身長差のある馬場を
持ち上げたサンマルチノ!

 

木村もここ一番で使っていた。

 

小林は抱える方向が逆。

 

 この技はアマレスで相手を裏返す際にリフトする技に締め付けるという要素を加えたもので、非常に古典的なわざといえよう。20世紀初頭の強豪ジョージ・ハッケンシュミットも宣伝写真でこの技を使っている。しかし彼の身体は非常に素晴らしくビルドアップされている。そっちの趣味はないが、みていて惚れ惚れする。このハッケンシュミットに良く似た体型ですばらしい肉体を誇ったのがジョージ・ゴーディエンコである。彼もこの技を使い相手を悶絶させた。ブルーノ・サンマルチノは馬場を豪快に担ぎ上げ、日本のファンを震撼させた。怪力ではトップクラスのドン・レオ・ジョナサンもこの技を難なく使いこなした。この他にディック・ザ・ブルーザーもこの技を豪快に使いこなしたが、残念ながらベストショットが手元になかった。

 日本人では国際プロレスのエース、ストロング小林とラッシャー木村が使っていた。小林の場合は相手の股間に顔をうずめるような格好で持ち上げるのが特徴。このままツームストンにも移行できそうな感じだ。ラッシャーは前述のようにはじめからこのの技を狙って出すというよりも、カナディアン・バックブリーカーを失敗した時のフォローとしてこの技を使っていた。しかし、それでもジプシー・ジョーをこの技でギブアップさせている。

 かけられる相手の顔も観客に見えるし、逆さに吊り上げるという残酷さも兼ね備えた技だが、この技の継承者はいなくなってしまった。スタンプ・ホールドで豪快に振り回しておいて、投げっぱなしパワーボム・・・という流れは大技連発に毒された今のファンにも十分説得力のあるフィニッシュになると思うのだが・・・。