マイティ井上のサンセット・フリップ

2003.11.30update

 

これがマイティ井上のサンセット・フロップだ!

 

 最近日増しに国際プロレスへの郷愁の念にも誓い思いが自分の胸にフツフツと湧き上がってくるのを感じる。そのたび私は国際プロレスのビデオを再生するのである。そこに映し出されるのはパンチパーマのラッシャー木村、長髪のアニマル浜口、そしてサイケデリックなタイツのマイティ井上である。

 井上というレスラーは国際プロレスの中にあって、独特の雰囲気を持つレスラーであった。ドロップキック、フライングヘッドバット、サンセットフリップなど、空中殺法を得意としていたのだが、それらはいずれもユーモラスといおうか、独特の「井上テイスト」がプンプン漂っていた。中でも彼の使うサンセット・フリップ(サマーソルトドロップ)にはなんともいえぬ魅力があり、それを支持する少年ファンも多かったのである。

 当時この技を使う日本人はタイガーマスクが登場するまで井上一人だったと記憶する。ということはこのワザは井上の専売特許的技だと他のレスラーも認めていたということだろう。このワザはダウンした相手めがけて宙返りして背中からボディプレスを見舞うという単純なワザである。しかし井上のサンセット・フリップには独特のテイストがあった。というのは回転する前に一種のダンス(?)のような独特の動作と「あ〜あ〜あ〜」といったような奇妙な掛け声を発したのである。これが少年のハートをがっちり掴んだのである。あの独特の動きはマネようとしてもマネのできるものではなかった。井上のあの不思議な動きをおみせ、掛け声を発すると、ファンは「来た来た、サンセットフリップ!」と胸躍らせたのである。ワザに入るまでの動き・・・これもファンを魅了するプロの技なのである。

 

     

 

 このワザの元祖はエドワード・カーペンティアである。昭和45年の初来日の際に公開しているが、やはり体操選手出身だけあって、運動力学と実践するような(?)腕のふりを見せている。意外と重量感があるのに驚く。

 本家のカーペンティアに先駆けてこのワザを公開したのがメキシコのブラッキー(ブラック)・ゴールドマンであった。彼が使うこの技はバックワードダイブとよばれた。後に名脇役として評価されるゴールドマンはこのシリーズでは大木金太郎のアジア選手権やデストロイヤーとのコンビでインター・タッグ選手権に挑戦するという大活躍。やはりこのワザのインパクトがフロントやファンにアピールしたのであろう。他にビクター・リベラ、ドン・レオ・ジョナサンがこのワザを得意とした。一番の圧巻はだるまのようなオットー・ワンツのスチーム・ローラーとよばれたサンセットフリップ。不恰好だがこれは意外性もありインパクトがあった。ヘビー級のレスラーが使ってこそ迫力のあるわざとえよう。

 

 
ブラッキー・ゴールドマン   ビクター・リベラ

 

 
オットー・ワンツ   ドン・レオ・ジョナサン

 

類似技研究「サンセット・フリップほか」もご覧ください