キラー・カール・コックスの元祖ブレーンバスター

2001.6.22 update

 

     
             
タイツをつかんで一気に持ち上げる   相手が垂直に制止するのを待つ   手を相手の胸にあてがい倒れ込む   相手が垂直になるのが理想

 

昭和プロレスの定番技と言ってもいいこのブレーンバスターだが、本来はその名のとおりに、相手の脳天を破壊する技であり、そのオリジナルはキラー・カール・コックスであるといわれ、日本では垂直落下式と呼ばれた。そして、一般的に使われた相手を背中から落とすブレーンバスターの元祖はカリプス・ハリケーンであると言うのが定説だが、実際はこの技はコックスとハリケーンが共同開発し、垂直落下式は危険ということで、ハリケーンは相手を背中から落とすスタイルをつかったが、コックスは危険な垂直落下式を愛用したのだ・・・というコックス自身のインタビューを読んだことがある。よく猪木が東京プロレス時代にアントニオ・ドライバーの名称でつかっていたフロントネック・チャンスリー・ドロップがこの技の起源と言われるが、それは違うともコックスは語っている。

 

   
         
マードックは左手でリフト   完全に垂直にしておいて   尻餅を付くように倒れ込む

 

 
     
猪木のアントニオ・ドライバー   坂口は腰が不安定

 

連続写真では脳天ではなく、後頭部をにダメージを与えるように相手の身体をやや後方に倒しているが、脳天を狙う場合はタイツをつかんだまま倒れ込んでいたようだ。筆者は残念ながらコックスのオリジナル・ブレーンバスターを見たことがない。これは筆者のプロレス研究における大きなロスト・ポイントでもあると思っている。このスタイルはディック・マードックが見事に継承した。マードックは仕掛ける前に「ブレンバスター!」と観客に宣言してからこの技を見舞っていた。51年12月に日本でコックスとマードックによるブレーンバスター合戦が行われた。それは壮絶な試合だったそうで、この試合はコックスのマードックへのブレンバスター継承式であったとも言われている。しかし、このスタイルはマードックの死によって、完全に後継者が途絶えてしまったことは非常に残念。坂口征二も一時期使っていたようだが封印している。

 

   
         
下半身の安定感と上半身の反りに注目   レイスはやはり安定度が素晴らしい   やや不格好だが木村も使い手の一人

 

さて、カリプス・ハリケーンを元祖とする「普及版」のブレーン・バスターだが、一番の使い手は何と言ってもハーリー・レイスであろう。アメリカではバーティカル・スープレックスと呼ばれていたように、彼のブーレン・バスターはやはりスープレックスと呼ぶにふさわしい充分な反りがあった。それと何よりもこの技の威力を増すのは、腰からしたの安定感そいわれるが、ハリケーン、レイスの写真を見て頂ければわかるが、両者ともにマットに根が生えたような安定感を持つ。日本人で一番の使い手は意外と思われるかもしれないが、国際プロレス時代のラッシャー木村だろう。彼も下半身の安定感は良く、この技をフィニッシュに多用していた。猪木もこの技を多用したが、下半身の安定感を欠き、横に投げ捨てるようなスタイルをとっていたが、これは不格好であった。ブレーンバスターはその後、ダイナマイト・キッドの高速式や、スコット・アーウィンが元祖の雪崩式などに発展していくが、この技をフィニッシュに使うレスラーは皆無となってしまったのは、非常に残念なことである。